家を出るときは恐怖を感じるほどの真昼の日差しが降り注いでいて、横浜の郊外の山がちな地形をえんえん歩かなきゃならないぼくは、すっかり気が滅入ってしまっていた。しかし駅に着くころには雲が広がってくれて、天の采配に感謝しきり。
今日は花柄の晴雨兼用の折りたたみ傘を持って出てきたのだ。そりゃさすがにいくらか気がとがめたけど、炎天下だったならそいつを使わずにはいられなかっただろう。背に腹は変えられないってやつで。
夏の日差しは雲で和らいで丁度くらい。文句なしの夏空も好きだけど。
下り坂の向こうに連なる屋根になんだか胸が騒ぐ。坂っていうのはどこかいい。空しか見えなくても、その先に何かありそうな、そんな上り坂もいい。ひとびとの生活を抱えた下り坂もいい。「坂」なんてのは人が世界のあり方を一部切り取って断面にして名づけたものにすぎないのにねえ。そんなものにさえ愛着をおぼえるのはなぜ。
さいきん坂本真綾の歌声がしっくり身に染む。昔から好きではあったんだけど、こんなにツボだったっけ……。
歌詞そのもの以上の広がりを感じさせてくれるところがいい。頭がいいんだろうな。しかもその広がり方がなんとも清涼感があって。人柄が表れてるんだろうと、そんなふうにも思えます。
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