講談社青い鳥文庫fシリーズ、梶尾真治『インナーネットの香保里』、絵はやっぱり鶴田謙二だ。もうこれだけで買う気になれますよ? ちなみになぜか解説にははやみねかおるが。
超能力青年と中学2年の女の子との旅の物語。
母親とけんかして山下公園までプチ家出した香保里は、追われてるらしい21歳の青年、安永を助けることになる。んでもって九州まで行きたいという彼をなんとなく放っておけなくて、ついていくことにするのだった。
彼はテレパシーのような超能力を持っている。その能力は、「インナーネット」――暗黙知をも含めた「完全情報」を共有するためのネットワーク――構築に必要不可欠であるらしく、そのために対立する2つの国際組織によって奪い合われる立場にあるのだ。しかも、実はその能力と関係する病気のせいであと半年の命であるという……。
まあ「小学上級から」な児童小説ですから他愛ない物語だし、もう少し風呂敷の広げようもあっただろうと惜しい気もするんですけど、ちょっとした描写が粋だったりにやりとできたり。中学生のころの気持ちを思い出したりしてなんだか懐かしくなれます。
自分が勉強しようとしているときに「そろそろ勉強すれば?」と母親に言われると逆にまったくやる気が失せる、とか。
あとヘンなネタもあるよ。追っ手の探知機をさけるためには、なぜか頭にアルミホイルをまけばいいらしい、とか。
ラストはやっぱりカジシンの美しさです。清涼剤。
あと、香保里は安永のことを「暎兄ちゃん」とよびます。
「親子水入らずでのんびり散策しました」といいながら、その一部始終をビデオカメラがつけまわしているのはなんだかすごく笑える。もう慣れたんだろうけど。
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