傘がなかったので、濡れて構わないと思うことにした。もう暖かいから、びしょぬれになるほどの雨じゃなけりゃ別に問題ない。だが、そう決意したって、やはり濡れては困る場所が一箇所だけある。眼鏡だ。
ぼくは眼鏡が身体の一部な人種なので、雨の中で自転車をこぐときいつも意識することがある。眼鏡の角度と雨の関係だ。
雨が垂直に降っていたとしても、自転車をこげば相対的に斜め前方から雨粒は向かってくる。この角度に対して、眼鏡のレンズを平行に保つならば、レンズに水滴を付着せしめることなく走行できるのではないか。
あるいは、顔をさらに下に向け、眼鏡に対して額が庇となる角度を保てば当然ながら決して水滴がつくことはないはずだ。しかし、そこまで下を向くと、今度は前方の視野がなくなり、あえなく交通事故死という末路が待っていないとも限らない。だから、雨粒の経路と平行にレンズを保つ、この角度が最適だという結論に落ち着くわけだ。
雨の日はいつも、このことに留意しながら自転車に乗る。
今日は結果的に、レンズには一滴も水をつけずに帰りつけた。ということは、この最適角度が完璧に保って走行してのけたのに違いないのだ。
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