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もりげのどうかと思うような日記

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2007年03月25日(日) (強風)

スタニスワフ・レム『大失敗』

フィアスコー。なんという大失敗。暗くて真面目な方のレム。砂漠の惑星とかが好きなら気に入ります、たぶん。

個人的にレムの中でもいちばん好きかもしれんと思えるくらい良かった。展開はムチャクチャですが。でも彼の小説でこんなに音楽的な作品は他にないよなあ。まあ、この「音楽的」ってのは俺定義なので誰か理解してくれるのかどうかもわかりませんが。

たとえばステープルドンの『最後にして最初の人類』だとかイーガンの『ディアスポラ』とかが私にとって音楽的な奴です。『大失敗』は直接的にああいう壮大な世界を描く内容じゃないのだけど、構造が自己相似形をなしてフラクタルになってる辺りが近いのだ。しかもステープルドンよりよほど暗い。つまり、とっても良い。

挿話を読み返したりしていると、彼にとって大事だった「物語を閉じる方法」がどうしてこんな形をしているのか、みたいな謎も相まって、息苦しいくらい暗鬱な感覚に襲われます。結局、我々人類が良い方向へ行くこと、何かを理解することはまったく夢物語なのかもしれんわけで。

レムの文明論というか知性論は圧倒的に時代の先を行っていて、その考察は悲観に偏りすぎのきらいはあるけれど、ともかく興味深い。先日紹介した『ポスト・ヒューマン誕生』と好対照の書物として読み比べるのも一興です。かたやノンフィクション、かたやフィクションですが、そのことも含め。

ま、わたくしゃ既にシンギュラリタリアンなので、レムに対してしたり顔で「暗いことばっかり考えてちゃ、来るはずの明るい未来も来ないし、わかるものもわからなくなっちまうぜ」とかほざいてみたい気分ですけどさ。

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