今更ながら。髪を切りに行ってみると、席に案内された後で割とほっとかれたのでそこで読了。
担当の美容師は若いお姉さんだった。
――ぼくが『宇宙舟歌』を読んでいるのを後ろから目に留めた彼女は、
「あ、宇宙舟歌? ですよね、それ」
とちょっと弾んだ声で訊いてくる。
「え、あ、ハイ」
よもやそんな展開があろうとは、とこっちも驚きに声のトーンが上がる。
「面白いですよねっ。なんでこれ今まで翻訳されてなかったんだろ」
「ですよね。地球礁よりずっと好きだな」
「そうそう。私も思いました」
「ところで彼氏、いるんですか?」
「今いないです」
「つきあおう」
「はい」
――というような、妄想をしました。いや、そんな個人的なことはぜんぜん関係なくて。
宇宙を舞台にしてオデュッセイアをやってしまおうという、壮大なホラ話。神話的というか、バカバカしいけどどこか神々しいお話。なんか、物語を摂取する喜びの原点を思い出させてもらえるような感覚。熱い血が滾ります。
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