本降りになった雨の中をばしゃばしゃ歩いていたら、前を行く老夫婦の会話が聞こえてきた。
「出かけて雨に降られるのははじめてじゃのう、ばあさんや」
「そうじゃのう、じいさんや」
口調はたぶんちょっと違ってたと思うけど、内容はこの通りだった。あの御歳になるまで、お出かけの日に雨に降られたことがないというのは、ほとんどファンタジーだと思う。
そして、今日みたいなただの雨の日も、あの老夫婦にとってはきっと特別な思い出の日になるんだろう。不運な思い出でしかないのかもしれんけど。でもまあ、靴にしみて不愉快なだけの雨が、ちょっとだけ特別な雨に変わった気がしてしまって、それはそれでアリかなあ、などと。
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いいはなしですね。
世の中はそんなちょっとした話でいっぱいなようです。