■ 03年3月前半雑記 | Date: 2003-03-03 (Mon) |
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雑記
3月2日
NHK-FMで、「現代の音楽」という番組がある。その名の通り現代音楽を流す番組だ。
今日、その番組を流していると、不意に「いしやーきいも、やきいもーぉー、やきいもー」の歌が聞こえてきた。結論から言えば、それはラジオからの音声ではなくて、実際に焼き芋の販売車のスピーカーが鳴っているだけだったのだが、しかし私は一瞬、その「やきいもー」の声はラジオの現代音楽の一部であると固く信じたし、そういうことが実際にあり得るのが「現代音楽」という代物なわけである。
それとは関係ないのだが、今日は洞窟壁画についてのTV番組の録画を見た。「ネガティヴハンド」と呼ばれる壁面に残された手形や、抽象的な模様も含めて考えれば、壁画には「狩りの成功を祈る呪術」なんてもの以上の意味が隠されているに違いない、という内容の番組であり、非常に端折って言えば、壁画とはすなわち闇の中の精霊との交感そのものであったのだと主張していた。描かれるものが巨大動物に限られているのも、それらの存在にこそ霊性と、そして人間に対する卓越性を認めて、畏怖していたからではないか、ということだ。
壁画を案内する「写真家」と「音楽家」のふたりのキャラクターもおもしろかった。「ここは『闇の中でいちばん見晴らしのいい場所』ですよね、上も下もない世界だ」などと言う詩的なことばさえ説得力じゅうぶんに語るのだから素敵である。特に、「音楽家」の方は、洞窟内の音響も、壁画を描くという行為と大きく関係しているに違いない、という考えを披露してみせ、またそれも非常な説得力を持って響くのだった。
そして、2万年にわたり同じ絵を描きついできた人類が、やがて牧畜をはじめ、自然に対する自らの優位を意識しはじめるに及び、ついに壁画は描かれなくなったのだ、というなんともうまい具合に余韻を残して番組は終わった。
以上のことに影響されて漠たる思考をしている私なのだが、たとえば、洞窟の闇の中で見る幻覚や神秘体験はまさに脳内物質の作用に他ならないにもかかわらず、それは人間というものや死生観という問題においてはある意味真実となり得るものなのではないか。私は世界に意味を付与したいと欲しているが、それは「石焼き芋」の声を切り取ってきて芸術と称して聴かせるような「意味」の与え方ではなくて、極限まで脳の作用を突き詰めていったときに残るもの、原初より存在するもの、脳構造に由来する人類普遍のものへの「意味」の付与だと思うのだ。
だが、その「普遍」は、たとえば「大切な人を笑わせていたい」というようなことばに現れるのではないか、と考えてしまうような私は、少なくとも普遍ではないだろうし正しくもないのだろう。
霊性などというものとは無縁の現代を生きながら、我々はたとえば「意味なんてねぇよ」と言いながら引きこもったり、愚にもつかない幻想こそを真実だと言い張って胸の張り裂ける思いをしたりし続けるしかないのかもしれない。
一度くらいはアイソレーションタンクに横たわってみたいものだ。そうすれば少しはこんな何もかも真実味に欠けた世界も色鮮やかに変わるに違いない。
3月3日
なんですか、雛祭りなのにあいにくのお天気でしたね。えーと。
なんか書くことはないんですかね、自分?
毎日あたまに浮かぶ徒然なることを書きつづるとなると、それはもう痛い痛い日記のできあがりですし。
オーケー、人間として更生するんだ、前進だ。自分に自信を! 男の誇りを!
滝本氏にならって……パソコンでも燃やしますか、自分?
3月5日
昨日は飲み会に行ってました。しかも幹事でした。音楽関係で飲みに行くのも随分慣れたなぁ。クラシックの会話も普通についていけるようになったし。
ピュアガールの東×元長2氏の対談をようやく読んだのですが、なんですか、あれは? 『動物化するポストモダン』とやらは読んでないのでなんとも言えませんが、東って方は相当のDQ……いえいえ、なんでもありません。いやぁ、特に麻枝ファンの私としては、あれほどに麻枝シナリオを読み間違えた発言をする人がいることに驚き。萌え要素だけでユーザーの感情を操作するって……本気でそう思ってるのか? 記号化不能な、個人的妄想が中核にあり、それが萌え泣き系ストーリーを身にまとって語られているだけだということをはっきり見抜いていた更科修一郎氏の方がずっとましですね。
・・・
ダメ人間スカウター、絶対壊れてます。戦闘力1685000、滅判定いただきました。ありえません。
3月6日
いろいろと思うところあって平野啓一郎『葬送』を読んでたりするのですが、ああ、文学は自分には合わないんだなあと実感します。個人の悩む様の延々つづく描写や、芸術に関する論議を登場人物に長々やらせるのや、なんやかんや、どうも肌に合わない。
それに、この作者、文章読みにくいです。多分一文一文ものすごく吟味して書いてるからなんだろうけど、文脈の自然な流れってものが全然ない。
あと、会話文の表記も、
「こんな風にかいてあるんですよ、最後に句点入れて。」
とじ括弧の前の句点って必要ないと思うんだけど。ああやると小学生の作文みたいですよね。見た目が。まあ、アルカンが登場人物として出てくるらしいのでそれを楽しみにしつつ。
3月8日
山田悠介氏のジオのページは一応閉鎖されてることになってんですがね……。残ったままのゲストブックはああいうことになっているわけで。
・・・
ところで、今日新聞の投書で「アンパンマンパン」という単語を目にしたのでちょっと調べてみました。
これがアンパンマンパンだ!
……ほんとにそういう名称なんだ。どっかの手作りパン工房ベーカリー古河なんてお店があったとして「アソパソマソパン」を勝手に売ったりしたら訴えられてしまうわけですね。まあそれはそれとして、恐ろしいことに私は気づきました。
アンパンマンは、アンパンを象ったものであるはずです。そして、彼の仲間には食パンマンやらカレーパンマンやら様々なパンを象ったキャラクターがいますね。
さて、アンパンマンパンというパンが存在するのなら、アンパンマンパンを象ったキャラがいたっておかしくないはずなんです。それは、すなわちアンパンマンパンマンということになります。
が、ここでもう一度アンパンマンパンの写真を見ていただきたい。これを象ったキャラは、恐らくアンパンマンとうり二つになってしまうでしょう。というか、むしろその二人は同一人物であると断言しても良いようにも思えます。
これはただごとではありません。
アンパンマン=アンパンマンパンマン
という式が導かれてしまったのです。アンパンマンを象ったパンを象ったキャラは、元のアンパンマンと同じであった。ということは、アンパンマンパンマンを象ったパン、アンパンマンパンマンパンを象ったアンパンマンパンマンパンマンももとのアンパンマンと等しいということになる。その先も同じことです。もしあなたがアンパンマンパンマンパンマンパンマンパンマンパンマンであったとしても、すなわちあなたはアンパンマンなのです。
こうしてなんだかわからないうちに、この世はアンパンマンとその無限の兄弟たちによって浸食されてしまっているのだ。
3月9日
それはふと茫漠とした思考にとらわれた一瞬の沈黙であった。アバレンジャーの録画を見せられたせいであろう、俺はこんなことを考えていたのだ。
「CGになったロボは確かに凄いけど、逆に俺が見ていたころの特撮より迫力やリアリティーがそがれている気がするな」
「あばれた数だけ優しさを知る……なんてすごい歌詞なんだ。たとえばニュースに良くある『刃物を持った男が暴れていると通報があり』とかいうフレーズだけど、あの刃物を持った男はまさに優しさを知りつつあるところなのだな」
それは、実際どうでもいい思考でしかなかった。だからこそ、その沈黙に不意に投げ入れられた言葉はひときわ俺の心に大きな波紋を広げたのだろう。
「世の中、金と女だよ」
それはまったく、正しかった。非の打ち所のない正しさだった。まるでゲーデルが不完全性定理を生み出す以前の純粋数学の証明のように、簡潔で美しく見えた。
だが、俺は知っていた。彼とは過去に話したものだった。「世の中金と女がすべてだ、みたいな風潮があるけどさ、あれを変えてやりたいよな」――そう、大事なことはきっと他にある。そう信じて語り合ったはずだった。あのころ、みんなは理想に燃えていた。愛より恋よりアニメが好き、というフレーズもきっと当時は胸に響く力を持っていたのだ。お金なんかなくたって、テレビは観られるし。グッズは買えないけどな。
ともかく、俺たちは理想に燃えて語り合ったものだった。だから、俺は
「世の中、金と女だよ」
と悟りきった口調で言った彼に激昂して罵詈雑言を並べるべきだったのだ。どうしてよ! と。あのときあなたはそんな世の中を変えたいって言ったじゃないの! と。いつからあなたはそんなあきらめの良い人になったのよ! と。襟首を掴み、胸にすがりつき、爪でひっかき、頬を張ったりしながら、滂沱たる涙にまみれ、息も絶え絶えに、そうひせって見せるべきだったのだ。
だが、そんな後悔は詮無いことだ。俺は彼の言葉に納得したし、そうせざるを得なかったのだから。
だけど。それは仕方の無かったことだとはいえ。
今でも俺は思うのだ。あのとき、否定の言葉を、ただひとつの否定の言葉を放っていれば、彼の物語はこんな結末を迎えなくても済んだのではないだろうか、と。
・・・
私のような人間が「世の中、金と女だよ」発言をするときは、しかし恐らく世間一般の意味とはかけ離れている気もする。私のこの発言は、丁寧に日本語に訳すと、
「世の中、真実の愛を得るか、もしくは食い物と趣味の書籍等購入費に困らない程度の金が自由になるのであれば、恐らく我々の鬱屈した感情は大幅に改善されるだろう」
というような内容なのだった。赤いスポーツカーに乗ってヒョウ柄のコートを身にまとった金髪美人を侍らせたい、というのとは大違いである。……って、そんなこと望んでる人いないか。
3月10日
やっぱりディックの『ヴァリス』に心の底から共感ってのは凄いことだと思うんですね。まあ要するに救世主コンプレックスと神秘体験の妄想を書きつづった既知外小説であることは確かですけど、なんにしてもディックは天才だ。その天才に共感するということは、やはり天才であることの証左に違いありませんよね。
・・・
SFJapanの古川氏の作品、いいですねぇ。しかし、日出男、って名前を見るといつも「日野日出志」を思い出しちゃうんです。
3月11日
クラナド5月発売予定の欄に! き、き、きき
キタ━━━━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━━━━!!!!
って、メッセのリストだしな。あてにはならん。
大体その時期って、教育実習中だしなぁ。むしろ本当に5月中に出されるとちょっといやかも。教育実習で出会った素敵な女性(男子校なんで実習生仲間のことね)といい雰囲気になったりしなきゃならないんだから! 「君だけのためにこのショパンを弾くよ、ふっ」とかやらなきゃいけないんだから! クラナドなんかやってる暇ないんだから!
えーと、……まあいいや。いや、ぜんぜん良くないとは思うんですけど、自分でも。それよりなにより目先にちょっと勝負事が控えてるんでそちらに集中ですよ。教育実習のことはそれに敗れたときに改めて考えましょう。
3月12日
というか、昨日あのような内容を綴ったばかりなだけに反省というかなんというか微妙な気分なのですが。
みなさんご存じとは思いますが、魁氏がバイク泥棒に刺されて重傷、入院していたという。アルマの延期もそのためだったようです。開発日誌を読むと、肺を刺されるなど一歩間違えると大変なことになっていたところ。ちなみに、この事件の詳細はどうやらコレです。メッタ刺しって、しゃれになってません。
一応解説しておくと、魁氏はbonbee所属のシナリオライター、VA内チームのよしみでクラナドにも参加しています。ちなみにAir美凪編のラストを書いたのも彼です。
最近はバイク泥棒が頻発しており、分解してはネットオークションにかける手口で荒稼ぎする輩があちこちにいるようです。どうかみなさん、気をつけてください。今回の事件を考えると不用意に追いかけるのも危険かもしれませんし……。
魁氏は幸い既に退院なさったとのこと。全快されることを祈念しつつ。
3月13日
N先輩の室内楽を聴きに行ってました。シューベルトのピアノ5重奏「ます」の幸せに包まれました。本当に。その瞬間だけは。
・・・
以下、省略されました。キイワードは、「混乱」と「懊悩」です。とりあえず計画までの2日間を乗り切るようがんばろう、自分。
3月14日
眠れるわけがない。眠れるはずがない。そう思った。こういうときこそ、音楽にでも癒しを求めたいのに。
そこで気づいた。CDを買ってきてたんだった。前々から気になってはいた、朝崎郁恵さんの「うたばうたゆん」というやつ。
聴いてみた。煩悶が、薄められて行くのを感じた。どこまでも遠く海を渡る風のように、ぼくの心を島へと、この現実と地続きではない遠い島へと運んでくれた。
奄美島唄の最後の正統継承者といわれる彼女の歌声は、一度聴いたら決して忘れることはないだろう。奄美と言えば元ちとせが大ブレイクしたのは記憶に新しいが、はっきり言ってレベルが違う。これほど琴線に触れてくる歌はそうそうあるものではない。
彼女の歌を聴くと、失われた鮮やかな世界のことを思う。鳥の鳴く声にも、波の寄せる音にも、計り知れぬ意味のあった時代を。確かに神とともに生きていた人々のことを。ぼくは科学信奉者であるが、しかし、世界を読み誤った末の物語にも確かに幸福は訪れるのだ、ということを島唄を聴きながら強く感じたりするのだった。
・・・
今晩もこれを聴きながら寝よう。そうすれば何とか保つはずだ。
3月15日
なぬ。懊悩って通じないのか? ……まあ通じようが通じまいがどーでもいいや。この雑記への取り組み自体が微温的なんだし。ここ数日のキレぎみな内容も半分はネタなんでそこんとこヨロシク。
あー、大丈夫ですよ。快復しました。討ち死にもしてません。しかし……まあ、長期戦だな。安保理決議とか以前に、軍事演習やら新型爆弾の開発から取りかからねばならぬ。いや、それはそれで楽しいので良いのですけど。隣国に攻め入って腕試しといくかなー。
なんといいますか、模擬戦であるという自覚の上であれば余裕は持てるし。そのくらいはやって自信をつけていかないことには、この後ろ向きな妄想癖は治らない気がする。
・・・
ささだあすか、俺も買うかー。ねえねえ、朝崎郁恵、みんなきこうよ。ほんといいんですって。
感想、憤激、おまえの正体は見破った等、もしよろしければこちらまで