桐生祐狩『小説探偵GEDO』(ハヤカワSFシリーズJコレクション)読了。小説内の世界へと入り込める特殊能力をもった広告会社の個人経営者が、さまざまな小説にもぐりながら謎解きをしたりする連作短編集。魅力的な設定だし、キャラが立ってるのでおもしろく読みました。
さらりとした筆でどんどん悲惨な境遇が語られたりする割に、登場人物はあんまり人生まじめに考えてなさそうなのがなんだか気になりますが――理屈づけはどうあれ齢ひと桁の子どもに性技しこんでたりするのはどうか――しかし旅する小説世界ってのが、モロ腐女子向け801小説だったり、ぜんぜん人気のないまま未完に終わった伝奇活劇だったりするのを考えあわせてみると、「母親の育て方のせいでわたしの心は大人になりきれなかったんです!」とかいうのをアイデンティティーの拠り所にした女がちまちました愛憎劇を繰り広げたりする、ウンザリため息が出そうなブンガクへのアンチテーゼと見てもいいですか。だめですか。
しかし、せっかくこんな設定にしたんだから旅する小説世界の描写をもっと鮮やかにやってほしかったなぁ。意図してのことなのかもしれないけど、翻訳ミステリの世界にいっても和製ハイ・ファンタシイの世界にいっても、主人公一人称の同じ文体一辺倒。小説ごとの風景の違いってもんがもっと見たかった気がします。
あと、連作としては未完です。いちばん大事な謎を残したまま終わります。ちょっとひどいです。まあ最悪な場面でぶっつり終わる「英雄伝説VI」よりはマシですけど(あれも続き気になるからどうせ買うけどさ……)。
どーんとやってみよう経由で存在を知ったはてなダイアリーですが、のだめを読んでらっしゃるよ。また音楽SF書いてほしいですなぁ。
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