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もりげのどうかと思うような日記

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2004年08月13日(金) うつしよはゆめ

ケルベロス第五の首

ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』読了、というか再読中なんですが。こういう高級な読書ができると深い満足感があります。形式からしてぜんぜん違う3つの中篇があわさったときに見えてくる景色。世界観などはまったく何も知らずに読み始めるのが一番良いと思う(ぼくはほとんどそうだった)。思うが、それじゃ読みたくもなりませんわけで、若島正氏の新聞書評なんかでしっかり設定の紹介などしてあります。

一人称で書かれる子ども時代の回想記である第一部、手探りでしか見えなかった世界の景色が少しずつひらけてゆくぞくぞく感。不可思議な手触りの民話的ファンタジーである第二部、実は多くの真実はこの夢のようにつかみ所のない話に含まれているように見える。手記やテープレコーダーの記録が断片的に見せられる第三部、ところどころにある齟齬から、話者の知らない真実が読者に見えてくる奇跡。

読み返すと、たとえば何気なく読んでいた第一部のちょっとした科白や言い回しが実に示唆に富んでいることに気づく。なんということはない短い文章が、全体の中で驚くほど深い意味を帯びて輝きだす。繰り返し読めば読むほど相互に補完しあった緻密な構成に感嘆できるという、そんな本。

で、はっきりした結論は出たのか、ってあたりが難しいのですが。むしろ出るわけない、というところが魅力の書き方ではあります。あちこちで多すぎるくらいにいろんな手がかりが見つかる。「これはこことつながってて、これはここの比喩ともとれて、etc.」頭がぐるぐるする。きっと何度も読み返すだろう。上記リンク先によれば、著者は

「何度も読み直し、何か手がかりはないかと思って表紙を点検し、本棚に入れ、後になってまた抜き出して手にとってみる、そんな読者がどこかにいる」のを期待

して小説を書いてるんだそうで、その目論見は完璧に当たっているわけなのでした。


あたまがぐるぐるする小説の書き手としては、ぼくが心底大好きな『昔、火星のあった場所』を書いた北野勇作という独特な人が日本にもいます。彼の作品とも共通する、記憶と自己同一性といったテーマを、より凄絶なものを埋め込んで細密画みたいに描きこんだのがこの本って感じか。

メモ : 解説サイト。英語だと読む気がなかなか起こらないのは悪い癖ですなあ。すらすら読めるようになりたひ。

夏影

配信中の劇場版AIR テレビスポットみました。てか、東京版の方は昨晩のテレビ放映で目にしてました。あの「鳥の詩」や「青空」がテレビで流れる日が来るとは……。15秒は本当短くてほとんど何やらわかりませんが、まあ、これは流すことに意味があるんだろう。映像の雰囲気は悪くないように思える。

しかし、これって劇中でもあの歌を使うと考えていいのだろうか。個人的には夏影を筆頭に絶対使ってほしい曲はいくつかある。

AIR というのは一生忘れないだろう作品のひとつなので、なんだかんだ言ったって気になってしまうわけでした。

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