夜の川べりの並木道を自転車で行く。夜勤のアブラゼミも世の中にはいるらしい。
エンマコオロギの声は個人的にはスズムシなんかより素敵だと思うけど、はっきり行ってこんなに蒸し暑いと情緒もなにもない、うっとうしいだけ。
やけに対岸の明かりがかすんでいる一角があると思ったら、干上がった川床に小さな焚き火を炊いて、大学生グループが花火をやってるのだった。
「楽しそうですね。ぼくもまぜてください」
「おお、おお、大歓迎だよ!」
ただの花火かと思っていたら、彼らはこれからロケット花火を使って「第三種戦闘配置ごっこ」をやるらしい。どんなごっこかというと、こんな感じ。
「ぷぁああ、ぷぁああ、ぷぁああ!」
「パルジファルのお告げです!」
「ぷぁああ、ぷぁああ、ぷぁああ!」
「2時方向に敵シュテュンプケ出現!」
「ぷぁああ、ぷぁああ、ぷぁああ!」
「聖杯システム稼動準備!」
「しゅぽーん!」
「敵シュテュンプケはベルゼブブ型と推定されますが、今までにないタイプです!」
「敵、攻撃を開始しました!」
「どっかーん! がっしゃーん!」
「総員、第三種戦闘配置!」
「総員、第三種戦闘配置!」
「ぴっぴっぴっ!」
「アメノウズメIV、接続位置に固定!」
「ごーん! がし! びしゃーん!」
「アメノウズメIV、発進!」
「ぐわぁぉおおおおおおおおおおおおん!」
「天岩戸開きます! 聖杯システムオールグリーン!」
ここでロケット花火が2時方向に向けて大量に発射される、と。恥ずかしげもなく節操もないネーミングと、全科白最後がエクスクラメーションマークなのがポイントな。この後、効果音担当のやせぎすの男は、もう少しかっこよい音を出せといわれてネズミ花火大量投下の刑にあうことになった。
ぼくはなんだか疲れたので線香花火をもらって齧りながら帰った。
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