人の合否に関わる立場というのは実は初めてかもしれない。電話をするよ、と言われていたけど、何時発表なんだかわからない。今か今かと待っていると、何にも手につかなくなってしまった。なんだか自分のときより緊張する。
仕方がないので、電話をそばに置いて寝ることにした。いつでもどこでも快眠できるのがぼくの特技のひとつだ。どんなによく寝た次の日でも、どんなに切羽詰った状態でも、どんなに悲しみで胸がいっぱいでも、寝る気になればグースカ眠れる。たぶん頭のどこかが弱いんだと思う。
しばらく寝ていたら、ぶうぶうぶうと電話が震えて、滅多に電話なんかかからないさびしいぼくはもちろん相手が誰だかすぐにわかって飛び起きた。
電話口で緊張して「はい」しかいえない。向こうも切り出しづらそうで、これはまさか、とか思うと声が出ない。
「あの、大丈夫だった」
むちゃくちゃ嬉しい。だれかれかまわず手をとって喜びを分かち合いたいくらい。でもぼくの部屋には今は猫すらいないのだった。
あー、こんなことじゃこういう仕事は絶対できないなあ。それとも、慣れていくものなのかなあ。それはそれでさびしいことだと思ってしまうのだけど。
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