なぜかついていったレッスン先の師匠さんが剣豪小説について語りだす。柳生の血には部落民の血が流れていた、だから十兵衛はその秘密を守るために人を切って回ったんだ、などなど。本当なのかよく知らない。きっと元ネタは五味康祐の小説に違いないのだけど。
「そうなんですかー、柳生にはそんな秘密もあったんですかー」
とか周りの人が聞き入ってる中、ひとり頭の中で「ラブリー眼帯」とか「シベリア柳生」いう単語がぐるぐるしているのがぼくなのであった。
「あの、先生、柳生を題材にした剣豪小説や子連れ狼なんかがお好きなら『十兵衛ちゃん』はいかがですか!? 超オススメっすよ!?」
と、幾度となく喉もとまで出かかったそのことばを、しかしぼくはしっかりとその度に飲みこんで見せた。この精神力を持ってすれば、きっと剣の道だってきわめられるに違いない。
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