「ぼくはねえ、小学生の頃からあれで」
教授はそう言って何かを懐かしむ顔をした。
「外に出るのが好きでね。授業中よく抜け出しては先生に怒られてたなあ」
ひとりでうなずかれても、学生はみんな反応に困っている。
「なんかねえ、さぼって外に行きたくなっちゃうんですよねえ」
彼は頭をかくと、手元の資料に目を落としてしばらく黙り込んだ。
そもそも、ドイツの韻文劇の話を――劇中に出てきた"Palma"なる画家の話をしてたはずなのになぜ唐突にそんな話を。
と思っていたら、
「うん、この Palma についてどっかに出てたなあ。ちょっと待っててください」
と言うなり彼は席を立ち、研究室のドアを開けてどこかへ消えた。
さっきの発言と今の行動と、関係ありませんよね、先生?
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