これは、よくない。私はそう思う。
『NHKにようこそ』は、ひとりの人間が身を切る痛みとともにあげた純粋な叫びであるべきだった。だからこそ圧倒的な共感の輪も生まれたのだから。
いま放送されているあのアニメからは、本物の臭いがしない。作り手が、主人公への熱い共感を持っていないから。視点が違いすぎる。クールに突き放して描くことで作品の持っていた意味をすべて剥ぎ取ってしまったことに気づかないのか?
むしろそれが目的なんだとすれば、そりゃ悪意ってもんでしょう。内省した上であの位置にいる主人公だからこそ涙を誘うのだ。それをあざ笑ってどうするのだ。
『Kanon』の舞シナリオを愛するあまりに『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』をああいう設定にせざるをえなかった原作者の熱情は、アニメ制作陣には共有されていない。
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