ヘスターかわいいよヘスター。
大変おいしゅうございました。超王道ジュヴナイル冒険小説。
在りし日の宮崎アニメを思い出してください。冒頭の数瞬を見ただけで、ああ、これからなんだかすごくハラハラドキドキの素敵な冒険が始まるんだな! という実感がわいてきたものです。それは決して裏切られない。この本の感触はまさにあれと同じ。
暗い荒れもようの春の午後――。ロンドンは小さな岩塩採掘都市を追いかけて、旧北海の干上がった海底を疾走していた。
冒頭段落の引用。良いねえ。
遥か未来、60分戦争で荒廃した地球は、都市淘汰主義――キャタピラつけて走り回る都市が互いに食い合う――の支配する世界になっていた。小さな岩塩採掘都市とはいえ、ロンドンにとって久々の獲物。街中がお祭り騒ぎになる中、史学ギルド見習いの少年トムは、仕事をさぼった罰として最下層での都市解体作業へと回されていた。そこで憧れのギルド長や、その娘(美少女)からあたたかな言葉をかけられ舞い上がるトムだったが、まさかギルド長の暗殺騒ぎに巻き込まれたあげく、ロンドンから放り出され、暗殺者の少女と共に旅をすることになろうとは――。
そんな感じのお話。物語る上でのツボってのが恐ろしいくらいに完璧におさえられてて、読んでてニヤニヤできます。容赦しないときは本当に容赦しない作者だけど、それがあざとさにつながってないあたり、バランスの取り方が上手いんだろうなあ。
なんか最近面白い(直球/冒険/ボーイミーツガール/You name it)ラノベに行き当たらないなあ、とかいう人はこれを読んでみるべきだと思いますよ。表紙にだまされるな!
ヘスターかわいいよヘスター。
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