「この暑さから逃れるためなら今すぐ死んだってかまわないと思わない?」
「へえぇ、死んだら命はないよ? 今日だってわたしとビアガーデンいく約束だったのにそれも叶わないねー。あんたはそれでもいいんだぁ」
からかうように言う。その程度の「約束」を持ち出したからって俺が心動かされるとでも思ってるのか。ずいぶんと自信家なんだな。
「ふふん。じゃあさ、死は死でも、君とビアガーデンに行き放題、ってな特典のついた死に限定ということで」
「死というのはそれほど甘いもんじゃないのです」
「そうかなあ。ともかくだ。この暑さを表すのには『猛暑』とか『酷暑』なんてありきたりなことばじゃ足りないような気がする。でね。考えたんだ」
「何を」
「『爆暑』ってのはどうだろう」
「あんたね、『爆』さえつければなんでも最上級になるという発想から卒業しなさい」
……脳が溶けてるんです。ごめんなさい。
たとえば今日のぼくの話。自分の演奏を心から気に入ってくれてる人がいて、多くの人の中からぼくを共演者に選んでくれた、ってのは小さなことなのかもしれないけれど、それだけで挫けずに歩いていけそうに思えるくらいに嬉しいことでもあるのでした。
ひとりで「ダメだダメだもうダメだ」って言ってるだけじゃいくら足掻いたってわからない強さを、他者との関係性はいともたやすく与えてくれたりする。他者に対して働きかけてみるというのはきっと大切なことです。
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