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もりげのどうかと思うような日記

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2004年09月15日(水) 毎週予約が3番組しかできないとは……

文字の不思議

文章というのは思っている以上に精神を映しているもので、相当に短い文章であってもその裏にある思考の形態が見えてしまったりする。そのことを、自分がこうして毎日のように書き散らしていることばに当てはめて考えてみると、かなり怖かったりするのだけど、それは決してしないように目をそむけておくのです。

特にはっきり意識するのは、あきらかに異常な精神が書いた文章、というやつ。

以前、アスペクトから出た「憑き物」というアンソロジーに載っていた牧野修の作品「ハリガミ」がある。これは純粋な小説ではなくて、統合失調症の患者の家の周りなんかで見かける電波なハリガミを模したものだった。その出来は途方もなく見事なもので、ファックスで原稿を受け取った編集部は最初ホンモノの異常者から届いたメッセージだと思い込んであまりの恐ろしさに凍りついたという。

さて、その作中に出てきて読んだ人々の間で一時期はやった言葉が、

許しませんでしょう

というものだ。一時期と書いたが、ぼくは今でもたまに口走る。コワイ。たったこれだけなのに、怖い。あきらかに普通ではないことがひしひしと伝わってくる。

いや、それはぼくがあの作品の全体像を知っているからで、何も知らない人が「許しませんでしょう」を見たら、ちょっと日本語が不自由な留学生とかが丁寧にしゃべろうとしてるだけだと思うのかもしれない。

でも、あの作品の文字をひとめ見てもらえば、背筋が凍る思いをすることは間違いない。そう、文章だけでなく、文字というものも、その書き方だけでずいぶんいろいろなことを語っている。昔からよく言われるとおりに。

話を文章に戻そう。人が手で書いた文字だけでなくて、文字そのものにある力というのもありそうに思える。文字それ自体に、意味のある文章を形作ろうという意志が働いてでもいるような。

だから、文字が正しく意味を成せないで並んでいるのは、かなり怖い。実は昨日ここの管理人こばげん氏の日記が文字化けしてて、その中にたまに意味の通る単語が混ざっていたりするのを見たのだ。それはたとえば、なんだかよくわからないどろどろの沼の中のところどころに、目玉とか指とか腸とかのパーツが浮き沈みしてる、みたいな雰囲気で、ぼくは総毛立つような思いだった。

ぼくらは文字というものの不思議を忘れて生活してるけど、たまにその驚くようなパワーに気づくときがあるのだ。なんでこんなとりとめもないことを突然考えているか、というと、(『ひぐらしのなく頃に』ネタバレにつき隠します)あの作品で、「くけけけけけけけけけ・・・」という少女の笑い声で画面が埋め尽くされるシーン、「け」という文字そのものが肝を冷やすほど恐ろしいと感じてしまった、という体験があったから。こういう、特定の文字の洪水の気持ち悪さには「宇宙人宇宙人宇宙人宇宙人宇宙人宇宙人」で埋め尽くされる倉阪鬼一郎『内宇宙への旅』とかでもかなり当てられたおぼえがありますから、個人的に弱いだけなのかもしれない。

とまあ、そんなことなのだった。

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