電車の中でふと、目の前の座席の女性が読んでいる本の見出しが目に入ってしまった。
オーラでメッセージを伝える方法
ひどく興味を引かれて本文を眺めていると、世の中の物体はすべてオーラを出していること、我々はそれに気づかないうちに影響されていること、たとえば本屋でふとある一冊の本が気になって手に取るようなとき、それはオーラパワーによる行動であること、などが書かれていた。
「って、何ひとの本じっくり盗み読みしてんのよあんた」
「いやあ、あまりにも面白そうだったから」
「理由になってないでしょっ」
「そうだよなあ。悪いこととは知りながら……。ってかおまえ久しぶりだな」
「え……、うん、そっかな」
「そうだよ」
「……そう、だね。うん」
「どうしたよ。元気なくないか?」
「え、それは、だってさ」
「だって、なに?」
彼女はそっと笑って、オーラの力だよねきっと、などと呟いた。
やってる時間がなさそうなのだがとりあえずキネティックノベル第一弾『planetarian 〜ちいさなほしのゆめ〜』購入するだけは購入。
馬場社長の提唱するこのジャンルを応援したい人間として、現在の販売形態にはやはり残念に思うほかない多くの問題がある。
決済の方法が限られていることだけでなく、そもそもこの初回購入時の手続きの煩雑さは、はじめから強い購入の意志を持っている人間以外を遠ざけてしまうだろう。
たとえば、本屋でオーラパワーを感じて、なんとなく手にとった本をレジへ持っていく、というような出会いは決して生まれそうもない。だとすればその現実は、「エロゲー発の文化を一般社会に広めてやる」という夢からはあまりに隔たっている。
ビジュアルアーツとBBサーブ、両方の販売規約を続けて読まされるのがまずウンザリだ。BBサーブからのメール送信には微妙に時間がかかり、しかもそこに書かれている購入確認用URLはコピペしてブラウザに貼り付けないとならないほどの異様な長さを誇っている。まあ、このメールを受け取る段階まで行った人間はほぼ購入したも同然なのだからかまわないといえばかまわないのだろうが、システムとして洗練を欠くという印象は否めない。これは二度目以降の購買意欲に関わる。
どうも総体的に見て、今回のプロジェクト、少なくとも大成功は見込めない気がしてならない。新たな物語作品のあり方として期待しているだけに、悔しい、という感覚が付きまとう。
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