ひぐらし目明し編を読んで、綿流し編の会話等がいかに注意深く書かれたものだったのか、改めて感じた。見えている部分の裏の裏まで考えぬかれた作品だという信頼。
実際のところ、前半部分なんかは話を作るために登場人物の行動がいささか不自然であるように思えたり、後半は感情移入しようがなかったりという状況だったのに、結局これだけ楽しめたわけで。
半端じゃなく作りこんだ物語をどうやってさりげなく見せるか、という技術が伴っていたのが大きいんだろうな。
キネティックノベル(という語を使っていいものか迷うが、ともかくデジタルノベル)系の表現形態にはからきし弱い性質なので、全体に評価が甘くなってる可能性はありますけど。読むテンポをあらかじめ制御された文章というのになぜこうも感情を揺さぶられるのだろうか。それと、音楽がついているというのはぼくにとってグラフィックより大きいことかもしれない。今回は音楽鑑賞モードがないのが残念なくらいそれぞれの曲も効いてたし。
さて。で、妄想解釈なのだけど、なんだか最初に想像してた大仕掛けが本当にありそうな気がしてきました。いちおう伏せておくけど、これって藤崎慎吾の『螢女』とかなり近い設定だったりしませんか。それだけでは意味不明な方もおられるでしょうからひとつだけ具体的な言葉をあげるなら、地底高熱生物圏。「鬼の国」の正体はこいつじゃないでしょうか。そう思う理由は複数あるんですが、長くなるので割愛します。
しかし、こういう形で物語に解答を与える場合、誰の視点でどう語るか、というのが難しくなりそうだ。そもそも今まで自然科学的アプローチは作品中でほとんどなされていないのだから。そう考えると、この妄想があたっている可能性は限りなく低い気がしてくる。
しかしいずれにしろ、ここまで理知的に構成された作品である以上、安易なオカルト解決だけはまずありえないだろうと思えるので、刮目して完結を待ちたい。
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