泣けるくらいすばらしいシューベルトを聴いた。うん、やっぱりこれは記号とかマーケティングとかバカバカしくなる領域ですよ。
むかしの知り合いの女性の話を人づてに聞いた。良い、話だった。
つい先日、その女性にばったり出くわして二言三言だけ挨拶を交わしたことを思い出す。ぼくが今の自分の所属年次を言うと彼女は
「そっか、もうそんなになるんだね」
と感慨深げに言ったのだった。
ここ数年どこかに姿をくらましていたことだけ知っていた。彼女はどちらかというと問題の多い人で、目指すものがあるはずなのに、そこに邁進することに困難を伴うタイプだった。姿をくらます前もなんだかいろいろあって派手に傷ついたりしていた。
それでぼくは、もうそんなになるんだね、と言われて、勝手に思ったのだ。ああ、この人の時間は止まったままだったのかな、と。
そうじゃなかった。苦しみながらも立ち向かって、彼女はちゃんと温かな場所にたどり着いていたのだった。まだ、辛いこともあるけれど。
そんなになるんだね、は、自分の慌しく過ぎた年月を改めて振り返ってのものだった。
本当はぼくが彼女に言わなきゃいけなかった。無為に学年を重ねたぼくとはわけが違うのだから。
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